クランプ式接地抵抗計の原理とは?補助極が要らない2つの理由
クランプ式の接地抵抗計で測った値が3極法と合わない。
この食い違いは測定器の異常ではなく、読んでいる抵抗がそもそも別のものだからです。
クランプ式が表示しているのは、挟んだ接地線から大地を通り、他の接地極を経て戻ってくるループ全体の抵抗で、その接地極1本ぶんの抵抗ではありません。
戻る経路が無い単独接地では電流が流れず、表示はオーバーレンジのまま動きません。
切り分けで見るのは、接地系がループになっているか、クランプの挟み方が正しいか、そして測っている対象が3極法と同じものかの3点です。本記事では、クランプ式が読んでいる値の中身・測れないときの切り分け・3極法へ切り替える判断を解説します。

GOOD DIY編集部
測る道具の選び方の専門メディア。レーザー墨出し器・水平器・ノギスから測量機器まで、メーカー公式資料で確認した仕様と廃番型番を掲載。カタログの数値の読み方から、自分の作業に合う機種の選び方を解説します。
※本記事はAIの補助を得て作成し編集部が校正しています。
クランプ式の接地抵抗計が読んでいるのはループ抵抗
まず押さえたいのは、クランプの中に2つのコイルが入っているという構造です。
片方が接地線に交流電圧を誘起し、もう片方がその電圧で流れた電流を検出します。
あとは電圧を電流で割れば抵抗が出るという仕組みで、補助接地棒を打たずに済むのはこのためです。
商用周波数の漏れ電流と混ざらないよう、注入する電圧は50Hz・60Hzとは別の周波数にしてあります。
測った値には他の接地極の抵抗が足されている
誘起した電流は、挟んだ接地極から大地へ出て、同じ系統につながった他の接地極を通って戻ります。
そのため表示値は、測りたい接地極の抵抗と、戻り経路になった接地極群の並列合成抵抗を足したものになります。
戻り側が多数あれば並列合成は小さくなり、表示はほぼ測りたい極の値に近づきます。
たとえば100Ωの接地極が20本並列なら合成は5Ωで、被測定極が10Ωなら表示は15Ω付近です。
逆に戻り側が2〜3本しかない現場では、上乗せ分が無視できない大きさになります。
そもそもクランプ式と3極法で何が違うのかを先に押さえたい場合は、接地抵抗計の測定方式の違いと選び方で解説しています。
値が出ない原因は接地の形か、挟んだ位置か
症状は大きく2つに分かれます。
オーバーレンジで数字が出ないか、数字は出るが明らかにおかしいかです。
前者は接地系の形、後者は挟み方を疑ってください。
ループが成立していない
独立した接地極が1本だけの単独接地では、電流の戻り道がありません。
クランプ式は原理上この状態を測れず、表示はオーバーレンジになります。
多重接地の系統でも、途中の接続端子が外れていたり、接地線が断線していれば同じ表示になります。
測定器を疑う前に、挟んだ線が本当に他の接地へつながっているかを図面と端子箱で確かめてください。
分割コアの合わせ面が汚れている
クランプは開閉する2つのコアを突き合わせて磁気回路を作ります。
合わせ面に錆・塗料・砂・鉄粉が挟まると磁気回路の隙間が広がり、値が高めに出たり、閉じ直すたびに数字が変わったりします。
閉じたときに「カチッ」と最後まで収まっているか、指で軽く押して確かめます。
清掃は電源を切ってから、乾いた布で両方の面を拭いてください。
挟む位置が違う
接地母線の上流側を挟むと、分岐した複数の接地極がすべて並列に入るため、実際より極端に低い値になります。
接地線を2本まとめて挟んだり、ループの行きと帰りを同時に挟んだ場合は、電流が互いに打ち消し合って0.00Ωに近い表示や不安定な表示になります。
測りたい接地極へ向かう1本だけを、分岐より下流で挟むのが基本です。
3極法と値が合わないのはクランプ式の原理どおり
両者を比べると、クランプ式のほうが高く出るのが原則です。
他の接地極の合成抵抗が必ず上乗せされるため、同じ接地極を測っても3極法より小さくなることは、理屈のうえでは起きません。
差が数Ω程度なら、戻り経路の合成抵抗がその分あったというだけで、どちらも正しい測定です。
注意したいのは逆のケースで、クランプ式のほうが明らかに低い場合には、挟んだ位置が分岐の上流だったか、測りたい接地極以外の経路を一緒に拾っています。
この場合は値そのものが使えません。
竣工検査や改修後の確認で3極法が求められるのは、クランプ式が接地極1本の抵抗を単独で切り出せないからです。
補助接地棒を使う手順と打つ間隔は、補助接地棒の打ち方と測定手順で解説しています。
挟み直しても直らないときに切り替える手順
位置と清掃をやり直しても値が落ち着かないなら、測定器側を確認する段階に移ります。
チェック用のループ(既知の抵抗値を持つ輪)が付属している機種なら、それを挟んで表示が規定値に入るかを見ます。
ここで規定どおりなら測定器は正常で、原因は現場の接地系にあります。
規定から外れる、あるいは表示が暴れる場合は、電池の消耗と校正期限の両方を確かめてください。
電池が弱ると電圧の注入が安定せず、低めにも高めにも振れます。
校正は定期的に受けるものですが、期限切れの器で出した値は記録として使えません。
中古で入手した器を使っている場合は、校正証明の有無が最初の確認点になります。
この点は中古の接地抵抗計で確認したい4点で解説しています。
なお、測定のために活線状態の接地線を外すのは避けてください。
接地が切れている間に地絡が起きると機器の金属部に電圧が現れます。
作業中に感電した、またはアーク閃光(せんこう)でやけどを負った場合は、自分で判断せず医療機関に相談してください。
クランプ式の接地抵抗計を使い続ける現場で確認しておくこと
同じトラブルを繰り返さないために、測る前に確認しておく項目は3つあります。
多重接地かどうかを先に調べる
系統が多重接地で、戻り経路の接地極が十分な数あることが使用条件です。
独立接地のポンプ小屋や単独のアース棒だけの設備では、何度挟んでも測れません。
現場に入る前に単線結線図で接地の構成を確認しておけば、3極法用の補助接地棒を持参するかどうかを判断できます。
クランプの口径と挟む線の太さ
接地母線が太い現場や、保護管ごと挟まざるを得ない場所では、口径が足りずにコアが閉じません。
閉じ切らないまま測ると値は必ず高く出ます。
測定箇所の線径と周囲の余裕を、機種選定の段階で見ておいてください。
漏れ電流も測る必要があるか
接地抵抗と同時に漏れ電流を読める機種なら、1台で済む場面が増えます。
漏れ電流の測定だけが目的なら専用のクランプメーターのほうが向いており、使い分けはクランプメーターの選び方の軸で解説しています。
メーカーごとの現行機の違いは、共立電気計器の接地抵抗計の機種差も参考になります。
やっても値が変わりにくい対処
ネットで見かける手当てのうち、クランプ式の誤差には効果が薄いものがあります。
電池交換は表示が出ない・暴れる症状には有効ですが、安定して高い値が出ている状態は電池を替えても動きません。
原因が戻り経路側にあるからです。
雨を待つのも同じで、大地抵抗率が下がれば接地極の抵抗は多少下がりますが、戻り側の上乗せ分や挟み方の誤りは天候で変わりません。
接点復活剤をコアの合わせ面に塗るのも避けてください。
油分が残ると砂や鉄粉を呼び込み、次の測定でかえって隙間ができます。
清掃は乾拭きで十分です。
クランプを何度も開閉して「安定する数字を探す」のも、値が変わる原因を放置したままなので記録には使えません。
よくある質問
クランプ式で0.00Ωと表示されるのは故障ですか
多くは挟み方です。
ループの行きと帰りを同時に挟んだ場合や、接地母線の上流で多数の接地極をまとめて挟んだ場合に、0に近い表示になります。
測りたい接地極へ向かう1本だけを分岐の下流で挟み直してください。
それでも0.00Ωなら、チェック用ループで測定器側を確認します。
単独接地の設備もクランプ式で測れますか
測れません。
電流の戻り道が無いため原理的に成立せず、表示はオーバーレンジのままです。
この場合は補助接地棒を打つ3極法に切り替えてください。
クランプ式の値が3極法より高いのは異常ですか
異常ではありません。
他の接地極の合成抵抗が必ず足されるため、クランプ式のほうが高く出るのが正常な関係です。
戻り経路の本数が少ない現場ほど差が大きくなります。
なお、接地抵抗計と絶縁抵抗計は測る対象が別物で、接地抵抗計と絶縁抵抗計の違いで解説しています。
まとめ
クランプ式で出た値がおかしいときは、測定器を疑う前に接地系の形と挟んだ位置を確かめてください。
戻り経路が無ければ数字は出ず、分岐の上流で挟めば低すぎる値になり、コアの合わせ面が汚れていれば高めに振れます。
3極法との差は原理上の上乗せ分なので、高く出ること自体は正常です。
挟み直しと清掃で変わらない場合は、チェック用ループと校正期限を確認したうえで、3極法に切り替えて測り直すのが確実です。ぜひ本記事の切り分け手順を参考に、手元の値が使える数字かどうかを判断してください。



