塗装用膜厚計のおすすめ|鉄とアルミで選ぶ機種が変わる
塗装の膜厚計を選ぶとき、最初に決まるのは測定範囲でも表示の細かさでもなく、塗膜の下にある素地が鉄かどうかです。鉄やスチールなら電磁式、アルミや銅のような非鉄金属なら渦電流式で、ここを外すと数値そのものが出ません。
膜厚計が表示する単位はμm(マイクロメートル)で、1mmは1000μmにあたります。
カタログの測定範囲や精度を並べて比べたくなりますが、素地の判定を先に済ませないと候補が絞れません。
フィッシャーのように、同じメーカーでも型番ごとに搭載している方式が違うこともあります。
本記事では、電磁式と渦電流式の選び分け・精度表記を比べるときの前提・方式を外したときに出る症状を解説します。

GOOD DIY編集部
測る道具の選び方の専門メディア。レーザー墨出し器・水平器・ノギスから測量機器まで、メーカー公式資料で確認した仕様と廃番型番を掲載。カタログの数値の読み方から、自分の作業に合う機種の選び方を解説します。
※本記事はAIの補助を得て作成し編集部が校正しています。
塗装の膜厚計で「おすすめ」が分かれるのは素地の側
膜厚計は塗膜そのものを直接つまんで測っているわけではありません。
センサーを塗装面に当て、素地の金属との間で起きる電磁的な反応の強さから、素地表面までの距離をμmに換算して表示します。
間に挟まっているのが塗料なのかメッキなのかは、測定器にとって区別がつきません。
反応する相手はあくまで下の金属であって、そこが鉄か非鉄かで物理原理が切り替わります。
そのため「塗装用の膜厚計でおすすめはどれですか」という問いには、全員に共通する答えが1つ出てきません。
車のボディ、鉄骨の防錆塗装、アルミサッシの焼付塗装では、同じ塗装でも下にある金属が違うからです。
測定範囲や分解能のスペックを比べる前に、まず自分が当てる面の素地を言葉にしてください。
素地が決まれば方式が決まり、方式が決まった時点で候補は半分以下になります。
素地ごとの切り分けをもう少し細かく確かめたい場合は、塗装の膜厚計と素地の対応関係で解説しています。
膜厚計の測定方式は電磁式と渦電流式の2タイプ
塗膜の厚さを測る電子式の膜厚計は、原理で2タイプに分かれます。どちらも非破壊で測れますが、反応する金属の種類が重ならないため、互いの代わりにはなりません。
| 方式 | 反応する素地 | 主な測定対象 |
|---|---|---|
| 電磁式(電磁誘導式) | 鉄・鋼などの磁性金属 | 自動車のスチールパネル、鉄骨、鋼管、機械のフレーム |
| 渦電流式 | アルミ・銅など非磁性の金属 | アルミパネル、サッシ、アルミホイール、非鉄の筐体 |
| 両方式を搭載した機種 | 上記の両方 | 素地が混在する現場、素地を事前に特定できない作業 |
ここで注意したいのは、見た目の塗装色やツヤからは素地が判別できないことです。
近年の自動車はスチールパネルとアルミパネルが同じ車体に混在していて、ボンネットだけアルミという構成もあります。
電磁式だけの機種でアルミのフードを測ると、塗装が乗っているのに表示が出ません。
方式ごとの反応の違いをもう一段深く知りたいときは、膜厚計の原理と素地の関係で解説しています。
測るものから逆算すれば機種は絞れる
選び方の順序は、測る対象から素地、素地から方式、方式から機種という向きで固定されています。逆から入って「精度の高いものを」と探し始めると、方式違いで使えない機種を候補に残したまま比較することになります。
車の塗装を測るとき
中古車の板金歴を見る用途であれば、スチールとアルミの両方が車体に使われている前提で考えてください。
1台の中で素地が変わるため、片方の方式しか持たない機種では測れない部位が残ります。
測った数値をどう読むかは車の塗装で見る膜厚の目安で解説しています。
鉄骨や配管の塗装を測るとき
素地が鉄に固定されているなら、電磁式のみの機種で用が足ります。現場で片手で扱える形状か、センサーが本体一体型か分離型かといった使い勝手のほうが、選択の分かれ目になります。
素地が金属ではないとき
樹脂バンパーや木部のように素地が金属でない面は、電磁式でも渦電流式でも測れません。
センサーが反応する相手がそもそも存在しないためで、この場合は原理の異なる別タイプの測定器が必要になります。
塗装用の膜厚計を買っても解決しないので、対象に樹脂が含まれるなら先に確認してください。
精度表記は校正条件とセットでしか比べられない
カタログには測定範囲と精度が書かれていますが、この2つだけを横並びにしても優劣は決まりません。
精度は「読み値に対する割合」と「固定値のμm」を組み合わせて表記されることが多く、どちらを適用するかの条件がメーカーごとに違うからです。
薄い塗膜では固定値側が支配的になり、厚い塗膜では割合側が大きくなります。
自分が測る厚みの帯でどちらが効くのかを見ないまま、数字の小さいほうを選んでも意味がありません。
もう一点、カタログの精度はすべて出荷時かつ規定の条件下での値です。
実際の現場では、曲面に当てたとき、素地の板厚が薄いとき、測定点が縁に近いときに値が動きます。
どの程度動くかは素地の形状で変わるため、一律の補正値は示せません。
付属の標準板で定期的に当たりを確認する運用のほうが、カタログ精度の比較より実務では意味を持ちます。
確認の手順は標準板を使った膜厚計の校正で解説しています。
同一メーカー内でも、型番によって搭載方式と対応素地が違います。フィッシャーのように複数ラインを持つメーカーでは、フィッシャーの型番別の測定方式で、型番と用途の対応を確認してから候補を決めてください。
方式を外した膜厚計は数値が出ないか、出ても信用できない
素地と方式が合っていないとき、現れ方は2タイプあります。はっきり不一致なら表示が出ないか、エラーになるので気づけます。
やっかいなのは、値は表示されるのに毎回ばらつくケースで、これは測定器が壊れているのか、当て方が悪いのか、方式違いなのかの切り分けが要ります。
切り分けの順序としては、まず付属の標準板で既知の厚みが正しく出るかを確かめてください。
標準板で正しい値が出るなら測定器は生きていて、原因は対象側か当て方にあります。
次にゼロ調整を、実際に測る対象と同じ素地の無塗装面でやり直します。
ゼロ調整を別の金属で取ったまま測ると、全体が一定方向にずれた値になります。
当て方の角度や測定点の取り方まで含めた手順は膜厚計のゼロ調整と測定手順で解説しています。
素地や方式が書かれている場所も押さえておいてください。
商品ページでは「適用素地」「測定原理」「対応素材」といった欄に、鉄のみか、鉄と非鉄の両方かが記載されます。
型番の末尾で方式を区別しているメーカーもあるため、シリーズ名だけで判断せず、型番単位で仕様欄を見ることをおすすめします。
よくある質問
鉄用と非鉄用の2台を買うより、両方式の1台のほうがいいですか
測る素地が1種類に固定されているなら、その方式だけの機種で足ります。
中古車の査定のように1台の中で素地が変わる作業や、持ち込まれる対象が選べない作業では、両方式を搭載した機種のほうが測れない部位が出ません。
判断の基準は精度ではなく、測る対象を自分で選べるかどうかです。
ゼロ調整は測るたびに必要ですか
素地が変わったとき、温度環境が大きく変わったとき、電源を入れ直したときはやり直してください。同じ素地を連続して測っている間は毎回行う必要はありませんが、値の傾向が変わったと感じた時点で標準板に戻って確認するのが確実です。
樹脂バンパーの塗装は測れますか
電磁式と渦電流式では測れません。
どちらもセンサーの下にある金属に反応して距離を割り出す仕組みのため、素地が樹脂だと反応する相手がありません。
バンパーまで含めて測りたい場合は、対応する素材の欄に非金属が入っている測定器を探してください。
まとめ
塗装の膜厚計は、測定範囲や精度の数字から入ると選べません。
鉄なら電磁式、アルミや銅なら渦電流式、素地が混在するなら両方式という順で絞り、そのあとで形状や扱いやすさを比べる流れにすれば、方式違いで使えない機種が候補に残りません。
精度表記はいずれも出荷時の条件下での値なので、買ったあとは標準板で当たりを確かめる習慣のほうが数値の信頼につながります。
ぜひ本記事の素地から方式を逆算する手順を参考に、自分が測る面に合う1台を選んでください。



