絶縁抵抗計の使い方|測定電圧の選び方と判定値の目安まで
絶縁抵抗計の使い方で最初に決まるのは、プローブをどこに当てるかではなく、測る回路の電源を落として無電圧を確かめたかどうかです。活線のまま測ると、計器も相手の機器も壊れます。
測定電圧のレンジ選びも、同じくらい結果を左右します。
判定の基準になる0.1MΩ・0.2MΩ・0.4MΩという値は電気設備技術基準の解釈で使用電圧の区分ごとに定められていて、どのレンジで測ったかと合わせて初めて意味を持ちます。
本記事では、停電から無電圧確認までの手順・測定電圧を間違えたときに起きること・値が低く出たときに疑う順番・測り終えたあとの放電を解説します。

GOOD DIY編集部
測る道具の選び方の専門メディア。レーザー墨出し器・水平器・ノギスから測量機器まで、メーカー公式資料で確認した仕様と廃番型番を掲載。カタログの数値の読み方から、自分の作業に合う機種の選び方を解説します。
※本記事はAIの補助を得て作成し編集部が校正しています。
絶縁抵抗計の使い方は、無電圧を確かめるところから
絶縁抵抗計は、自分で直流の高い電圧を送り出して、電線の被覆や機器の絶縁物がどれだけ電気を漏らすかを測る道具です。
相手の回路に電圧が残っていると、送り出した電圧と混ざって正しい値が出ないどころか、計器の入力側を焼きます。
そのため、準備の段階で3つの確認を済ませてから測り始めてください。
電源を落として検電する
該当回路のブレーカーを切り、検電器で無電圧を確認します。
ブレーカーを切ったつもりで別の系列を落としていた、という取り違えは分電盤の回路名が実態と合っていない建物でよく起きるので、切った状態で実際に電圧がないことを測って確かめます。
復電されないよう、操作した開閉器には札を掛けるか、作業者を1人配置してください。
リード線を短絡と開放で点検する
測定ボタンを押した状態でプローブ同士を触れ合わせると0MΩ付近、離すと無限大(∞やOL表示)になります。
ここが正しく振れないなら、リード線の断線かワニ口の接触不良を疑ってください。
この点検を飛ばすと、断線したリード線で測って「絶縁は良好」と読み違えます。
あわせて電池残量の表示も見ておきます。
測定電圧レンジを使用電圧に合わせる
多レンジ機では、測る回路の使用電圧に応じてレンジを切り替えます。
100Vや200Vの屋内配線に500Vや1000Vを当てる必要はなく、むしろ接続されたままの機器を壊す原因になります。
どのレンジを備えた機種が自分の作業に合うかは、電圧レンジと用途で決まる選び方で解説しています。
測定電圧を間違えると、測る前に機器が壊れる
絶縁抵抗計が送り出すのは、回路の使用電圧よりはるかに高い直流電圧です。
この電圧は絶縁物には問題なくても、電子回路には過大です。
インバータ、LED照明の電源部、制御基板、サージ吸収素子が付いた機器を接続したまま高いレンジで測ると、絶縁の良否を知る前に機器側が壊れます。
復旧のほうが点検より高くつくという、いちばん避けたい結末です。
判定に使う値は、電気設備技術基準の解釈で次のように区分されています。測った値がこれを下回れば、絶縁が劣化しているか、どこかで地絡しているという扱いになります。
| 電路の使用電圧 | 絶縁抵抗値 |
|---|---|
| 300V以下で対地電圧150V以下 | 0.1MΩ以上 |
| 300V以下(上記以外) | 0.2MΩ以上 |
| 300V超 | 0.4MΩ以上 |
注意したいのは、この基準が「どのレンジで測ったか」を前提にしている点です。
低い値が出たときに、レンジの選び間違いなのか本当に劣化しているのかを切り分けられないと、記録として残せません。
測定値は必ず測定電圧とセットで控えてください。
絶縁抵抗計で値が低く出るときに疑う3つ
基準値を割り込む値が出ても、いきなり電線を引き直す話にはなりません。原因が測り方の側にあることが多いので、次の順で潰していきます。
負荷を外し忘れている
分電盤で測ると、その先につながった機器すべての絶縁が並列に合算されます。
1台ずつは問題なくても、台数が多ければ合計の抵抗値は下がります。
低い値が出たら、分岐ブレーカーを1回路ずつ切って測り直し、どの回路で値が落ちるかを絞り込んでください。
機器側が原因なら、プラグを抜いた状態で回路だけを測ると値は戻ります。
アース側の接続が取れていない
アースクリップを塗装面や錆の上に挟むと、そこで接触が切れて見かけ上の高抵抗になります。
この場合は絶縁が悪くても良好な値が出るため、見落としとしては最悪の部類です。
接地端子か、塗装を避けた金属の地肌に挟んでください。
接地側そのものの良否は絶縁抵抗計では測れないので、接地抵抗計の3極法とクランプ式の違いで扱う別の計器が要ります。
湿気と表面の汚れ
雨天直後や結露した盤内では、絶縁物の表面を伝う漏れが加わって値が下がります。乾いた状態で測り直すと戻ることがあるので、天候と時刻も記録に残しておくと、翌年の値と比べたときに判断しやすくなります。
測り終えた絶縁抵抗計は放電させてから外す
測定を終えた直後の電線やケーブルには、送り込んだ直流電圧が電荷として残っています。長い幹線や高圧ケーブルのように静電容量が大きいほど残る量も多く、何も処置せずにプローブを外して素手で触れると感電します。
多くの機種は測定ボタンを離したあとも回路側と接続したままにしておけば自動で放電し、表示部で電圧が下がる様子を確認できます。
放電が終わってからワニ口を外す、という順番を崩さないでください。
自動放電の有無や表示の出方は機種で違うので、日置のIR4051とIR4052のような同シリーズ内の差も含めて、手元の機種の取扱説明書で確かめておくと迷いません。
機種ごとの仕様差はIR4051とIR4052の違いと選び分けで解説しています。
測定が終わったら、外した電線や端子は元どおりに締め直し、取り外した機器を戻してから復電します。ここを急いで、増し締めを飛ばすと別の事故を作ります。
指針式とデジタル式で変わる値の読み方と、測る間隔
表示方式によって、手を止めるタイミングが変わります。
指針式は針の動きそのものが情報で、ゆっくり上がり続けるのか、一度振れて落ちるのかという傾向を目で追えます。
デジタル式は数値を記録に転記しやすい反面、表示が動いているうちに読むと値がばらつくので、数字が落ち着くまで待ってから控えてください。
絶縁物は電圧をかけた直後に電流が多く流れ、時間とともに減っていくため、測定値は押している間じわじわと上がります。
どの時点の値を採るかを現場で揃えておかないと、同じ回路でも人によって記録が変わります。
高圧機器では1分後の値を使う運用が一般的で、低圧の屋内配線なら表示が安定した時点で読む扱いが多くなります。
測る間隔は設備の区分と保安規程で決まるため、一律の年数では言えません。
自家用電気工作物なら定めた周期での定期点検が前提になりますし、一般の住宅や店舗では改修や漏電が疑われたときが測るタイミングです。
なお、通電したまま漏れの傾向を把握したいならクランプメーターの選び方と用途別の使い分けで扱う漏れ電流測定が向いていて、絶縁抵抗計とは役割が分かれます。
よくある質問
テスターで代用できますか
できません。
テスターの抵抗レンジがかける電圧は数V程度で、数百Vをかけて初めて現れる絶縁物の劣化は検出できません。
測れるものが根本から違う理由は絶縁抵抗計とテスターの違いで解説しています。
メガーと書かれた機器でも手順は同じですか
同じです。
メガーは絶縁抵抗計を指す呼び方として定着したもので、別の道具ではありません。
呼び方が分かれた経緯はメガーという呼称の由来で解説しています。
基準値ぎりぎりの値が出たら交換が要りますか
基準を満たしていれば法令上は適合ですが、ぎりぎりの値は劣化が進んでいる途中の状態です。同じ条件で再測定し、前回の記録と比べて下がり続けているなら、更新の計画を立てる段階だと考えてください。
落下させたあとも、そのまま使えますか
表示が出ても、精度が出荷時のままとは限りません。
リード線の短絡と開放での確認を済ませたうえで、値に疑いがあればメーカーの点検に出してください。
基礎的な構造と選び方の軸は絶縁抵抗計とは何かを扱った記事、共立電気計器の機種構成はKEWシリーズの違いと選び分けで解説しています。
まとめ
手順の中で省けないのは、停電と無電圧確認、使用電圧に合ったレンジ選び、そして測定後の放電の3つです。
値が基準を下回ったときも、まず負荷の外し忘れとアース側の接触を疑えば、電線の張り替えに走る前に原因が絞れます。
ぜひ本記事の準備手順と切り分けの順番を参考に、記録に残せる測定を組み立ててください。



