絶縁抵抗計とテスターの違い|測れるものが根本から違う理由
テスターの抵抗レンジを回せば絶縁の良否も分かる、とはなりません。
テスターが抵抗を測るときに回路へ加えているのは内蔵電池由来の数ボルト程度で、絶縁抵抗計は内部で昇圧した直流125V・250V・500V・1000Vといった電圧をかけます。
同じ「抵抗を測る」でも印加電圧の桁が2つ違うので、表示された値が持つ意味も別物になります。
低圧電路に求められる絶縁抵抗値は電気設備技術基準の解釈で0.1MΩ以上・0.2MΩ以上・0.4MΩ以上と区分されていて、この判定にはJIS C 1302に適合した絶縁抵抗計を使います。本記事では、両者が加える電圧の違い・テスターの抵抗レンジで絶縁不良を見つけられない理由・測定電圧と判定値が対地電圧で決まる仕組みを解説します。

GOOD DIY編集部
測る道具の選び方の専門メディア。レーザー墨出し器・水平器・ノギスから測量機器まで、メーカー公式資料で確認した仕様と廃番型番を掲載。カタログの数値の読み方から、自分の作業に合う機種の選び方を解説します。
※本記事はAIの補助を得て作成し編集部が校正しています。
絶縁抵抗計とテスターでは、測るときに加える電圧が違う
テスターは電圧・電流・抵抗を1台で測る道具で、抵抗を測るときは内蔵電池の電圧を対象にかけて流れた電流から値を求めます。
絶縁抵抗計は同じように直流をかけますが、電池の電圧をそのまま使うのではなく内部回路で昇圧し、実際の使用電圧に近い高い直流電圧を加えます。
目的が「つながっているかを見る」のと「漏れていないかを見る」のとで分かれているためです。
電線の被覆や機器の絶縁物は、本来ほとんど電流を通しません。
そこに電圧をかけて、どれだけ流れてしまうかを抵抗値に換算したものが絶縁抵抗で、単位はMΩ(メガオーム)やGΩ(ギガオーム)になります。
絶縁抵抗計がメガーと呼ばれるのもこの単位からです。
| 見る項目 | テスター(回路計・マルチメータ) | 絶縁抵抗計(メガー) |
|---|---|---|
| 測定時に加える電圧 | 内蔵電池由来の数V程度 | 内部で昇圧した直流25〜1000V |
| 読み取る抵抗の桁 | Ωから数MΩ程度 | 0.1MΩからGΩ領域 |
| 主な用途 | 電圧確認・導通確認・抵抗測定 | 電路と大地の間、電線相互間の絶縁の良否判定 |
| 対応する日本産業規格 | 回路計として別に規定 | JIS C 1302 |
絶縁抵抗計が高電圧をかける仕組みそのものは直流電圧をかけて漏れを見る原理で解説しています。
テスターの抵抗レンジで絶縁不良を見つけられない理由
数ボルトでは漏れの経路が現れない
絶縁物の劣化は、湿気を吸った被覆や微細なひび、端子台にたまった粉じんといった形で進みます。
こうした部分は低い電圧では電流をほとんど通さず、使用電圧に近い電圧がかかって初めて漏れの経路になります。
テスターの抵抗レンジで測ると高い値を示して正常に見え、通電した途端に漏電遮断器が動作する、という食い違いが起こります。
読みたい桁がレンジの外にある
健全な低圧回路の絶縁抵抗は数十MΩから数百MΩ、状態が良ければGΩ領域に入ります。テスターの抵抗レンジは機種によって数MΩから数十MΩ程度までのものが多く、この範囲を超えると表示がオーバーレンジになるだけで、健全なのか測定できていないのかの区別がつきません。
そのうえ、竣工検査や定期点検の記録に残す絶縁抵抗値は、定められた測定電圧で測ることが前提です。テスターで読んだ値は、仮に0.1MΩという数字が出ても判定の根拠になりません。
測定電圧は対地電圧の区分で決まる
定格測定電圧として用意されている値
絶縁抵抗計の定格測定電圧は、JIS C 1302で25V・50V・100V・125V・250V・500V・1000Vが規定されています。市販の機種はこのうち2つから4つを切り替えられる構成が主流で、どの電圧を持っているかが機種選びの分かれ目になります。
判定値は電技解釈が定めている
低圧電路の絶縁抵抗値は、使用電圧300V以下で対地電圧150V以下なら0.1MΩ以上、300V以下のその他の場合は0.2MΩ以上、300Vを超えるものは0.4MΩ以上と定められています。測定電圧の組み合わせは、単相100Vや200Vの一般的な屋内配線なら125Vまたは250V、三相400V級の動力回路なら500V、高圧機器やケーブルなら1000V以上を使うのが一般的な運用です。
インバータや制御基板など半導体を含む機器が接続されたままだと、高い測定電圧で破損させるおそれがあります。
機器を切り離すか、低い測定電圧を選んでください。
電圧の選び分けと判定の手順は測定電圧の選び方と判定値の目安で解説しています。
テスターと絶縁抵抗計、どちらを先にそろえるか
導通確認と絶縁確認は別の作業
結線が合っているか、断線していないかを調べるのは導通確認で、ここはテスターの仕事です。
回路が完成したあとに大地との間が絶縁されているかを確かめるのが絶縁確認で、こちらは絶縁抵抗計でなければ判定できません。
片方があればもう片方が省けるという関係ではなく、作業の工程が違います。
電圧測定機能が付いていても停電確認は省かない
絶縁抵抗計には交流・直流の電圧測定機能を備えた機種が多く、日置電機のIR4051やIR4052もその系列に入ります。
測定前の停電確認をその機能で行えるため、点検業務が中心なら絶縁抵抗計を先に1台そろえる考え方が成り立ちます。
ただし電流は測れないので、負荷電流や漏えい電流を見るならクランプメーターの選び方が別に必要です。
停電できない設備で漏えい電流によって絶縁性能を確認する運用も、この測定器の領域になります。
どの電圧レンジを持つ機種を選ぶかは作業する電路で決まります。候補の絞り方は電圧レンジと用途で決まる選び方、機種間の差はIR4051とIR4052の違いで解説しています。
見分ける決め手は定格測定電圧の表記
商品名だけでは判断できません。
絶縁抵抗計は「メガー」「絶縁テスター」「メガオームテスタ」とも呼ばれ、テスターという語がどちらの道具にも使われています。
通販の検索結果で両方が並ぶのはこのためです。
確実なのは仕様表の定格測定電圧の欄で、ここに「125V/250V/500V」のように複数の電圧が並んでいれば絶縁抵抗計です。
テスターの仕様表にこの欄はありません。
測定範囲の欄に「MΩ」「GΩ」が出てくるかどうかも同じ手がかりになります。
パッケージやレンジ切替ダイヤルにも定格測定電圧が印字されているので、店頭なら実物の表示で確認できます。
あわせて測定カテゴリ(CAT II・CAT IIIなど)と最大使用電圧も見てください。
こちらはどちらの機器にも表示があり、測る場所に見合う区分でなければ安全に使えません。
道具の位置づけ全体は絶縁抵抗計とメガーの関係で解説しています。
よくある質問
MΩまで測れるテスターなら絶縁抵抗計の代わりになりますか
なりません。
表示できる桁の問題ではなく、加える電圧が足りないためです。
数ボルトで測った値は使用電圧下での絶縁状態を表しておらず、点検記録としても扱えません。
メガーと絶縁抵抗計は違う道具ですか
同じ道具を指します。MΩを測ることからメガーと呼ばれてきた経緯があり、カタログ上は絶縁抵抗計、現場ではメガーと呼び分けられている場面が多くあります。
絶縁抵抗計に校正は必要ですか
必要です。
表示された値が信頼できる前提で判定するため、定期的な点検や校正を行います。
期限の考え方と確認先は校正の有効期限と点検の目安で解説しています。
まとめ
テスターと絶縁抵抗計の分かれ目は、測定時に加える直流電圧の大きさにあります。テスターは電池由来の数ボルトで導通や抵抗を見る道具、絶縁抵抗計は125Vから1000Vの定格測定電圧をかけてMΩ以上の領域を読む道具で、どちらも仕様表の定格測定電圧の欄を見れば一目で区別できます。
測定電圧は対地電圧の区分と接続機器の種類から決まり、判定値も電気設備技術基準の解釈で定められています。ぜひ本記事の電圧の区分と見分け方を参考に、自分が扱う電路に合う1台を選んでください。



