膜厚計の使い方|ゼロ調整と測定点の取り方を手順で解説
膜厚計は塗膜に当てれば数値が出ますが、その数値が合っているかどうかは当てる前に決まります。測る相手と同じ材質の未塗装板でゼロ点を合わせておかないと、µm(1000分の1ミリ)単位の表示を読んでも基準のない数字になってしまうからです。
さらに、鉄の上とアルミの上では測定方式そのものが変わります。
電磁式は鉄などの磁性金属が素地(そじ)であることが前提で、アルミや銅の上では渦電流(うずでんりゅう)式でなければ値が出ません。
手持ちの機種がどちらなのかを知らずに当てると、数値が出ないか、出ても使えない値になります。
本記事では、ゼロ点合わせから測定までの手順・素地で変わる方式の選び分け・プローブの当て方で数値が狂う原因・標準板での点検のタイミングを解説します。

GOOD DIY編集部
測る道具の選び方の専門メディア。レーザー墨出し器・水平器・ノギスから測量機器まで、メーカー公式資料で確認した仕様と廃番型番を掲載。カタログの数値の読み方から、自分の作業に合う機種の選び方を解説します。
※本記事はAIの補助を得て作成し編集部が校正しています。
膜厚計の使い方はゼロ点合わせで決まる
測定そのものは、プローブ(検出部)を塗装面に当てて表示を読むだけです。手順のうち時間を使うべきなのは、当てる前の確認とゼロ点合わせのほうになります。
測る前に確かめる3つ
- 素地の材質。鉄なのかアルミなのかで、使う測定方式が変わります。見た目で判断できないときは磁石を当ててください。
- 測定面の汚れ。ほこり・油膜・養生テープの糊が残っていると、その厚みまで塗膜として加算されます。乾いた布で拭き取ってから当てます。
- 塗膜が乾いているか。電磁式も渦電流式も乾燥膜厚を測る道具なので、塗りたての面に当てるとプローブに塗料が付き、以降の測定まで狂います。
ゼロ点は「同じ素地の未塗装面」で取る
ゼロ点合わせは、測る対象と同じ材質・同じ厚さ・同じ表面状態の未塗装面にプローブを当てて、表示を0にする操作です。
付属のゼロ板を使うのが基本ですが、鋼板とブラスト処理した鋼板では表面の粗さが違い、同じ塗膜でも読みがずれます。
できるだけ測定対象に近い面で合わせてください。
当て方は、面に対して垂直に、押し込まずに静かに置くだけです。
プローブを傾けると素地との距離が変わり、値も変わります。
表示が止まってから読み、同じ点を何度も叩かず、範囲内の数か所を測ってばらつきを見ます。
1点だけでは、たまたま厚い箇所を全体の値だと思い込むことになりかねません。
素地が鉄かアルミかで膜厚計の方式が変わる
方式は大きく2タイプに分かれ、測れる素地が違います。
電磁式は鉄・鋼など磁性のある金属の上に乗った塗膜や樹脂皮膜を対象にし、渦電流式はアルミ・銅・ステンレスなど非鉄金属の上の絶縁皮膜を対象にします。
鉄用の機種をアルミサッシに当てても、値は出ません。
素地の見分けは磁石が早い
現場で素地が分からないときは、小さな磁石を当てるのが手っ取り早い方法です。
付けば鉄系、付かなければアルミや銅と見当が付きます。
ただしステンレスは種類によって磁石が付くものと付かないものがあるため、ステンレスだと分かっている相手では磁石だけで方式を決めないでください。
素地が金属でなければ、どちらの方式でも測れません。
木部・モルタル・コンクリート・樹脂の上の塗膜は、電磁式でも渦電流式でも反応しないので、別の原理の機種が要ります。
方式ごとに何が測れて何が測れないのかは膜厚計の原理と測れる素地の関係で解説しています。
両方式を1台で切り替える機種もあり、型番ごとの違いはフィッシャーの膜厚計の型番と測定方式で解説しています。
プローブの傾きと曲面で膜厚は実際より厚く出る
測り方の誤りは、エラー表示ではなく「それらしい数値」として出てきます。これが膜厚計のやっかいなところです。
プローブを斜めに当てると、素地までの距離が実際より遠くなり、塗膜が厚いという値になります。
曲面でも同じことが起きます。
パイプや手すりのように曲率の小さい相手では、プローブの先端が点でしか接しないため平面より厚く読まれがちです。
反対に、板の端や溶接ビードの近く、素地そのものが薄い箇所では、磁界や渦電流の広がり方が変わって値が低く出ることがあります。
この誤差がそのまま判断の誤りになります。
下塗りが規定に届いていないのに届いていると読めば、数年後に錆が浮いてから気づくことになります。
中古車の板金歴を膜厚で判断する場面では、曲面であるフェンダーの端で厚い値が出て、塗り直していないパネルを板金歴ありと誤って読むことも起こります。
数値の読み方は車の塗装を膜厚計で測るときの判断基準で解説しています。
膜厚計でよくある失敗と、その場での直し方
塗装済みの面でゼロを取ってしまう
いちばん多いのが、測りたい塗装面そのものにプローブを当ててゼロを押してしまう取り違えです。
こうなると、その塗膜の厚さが基準0になり、以降の測定値はすべて差分しか表しません。
気づいた時点でゼロ点を取り直し、同じ条件で測り直してください。
数値がふらついて止まらない
表示が落ち着かないときは、プローブを押し付けすぎているか、面が湿っているか、電池が弱っているかのどれかを疑います。
乾電池式の機種は電圧が下がると表示が揺れるので、測定前に交換しておくほうが確実です。
測定面の結露や、冬場に屋外から持ち込んだ直後の温度差も、ばらつきの原因になります。
プローブの先端が摩耗している
何度も金属面に当てていると、プローブ先端の当たり面は少しずつ削れます。
先端が荒れると素地との距離が変わるため、ゼロ点を取り直しても標準板の値と合わなくなります。
先端の傷や汚れを確認し、合わないままなら点検に出してください。
標準板での点検は作業の区切りごとに
点検とは、厚さの分かっている標準膜厚板を未塗装の素地板に重ねて測り、表示がその値に収まるかを確かめる作業です。ゼロ点合わせと合わせて、作業を始める前に1回行うのが基本になります。
頻度を一律には決められませんが、測定点数が多い日、途中で素地の種類が変わるとき、落としたあと、長期間しまっていた機種を出してきたときは、作業の前に確認しておくと安心です。
とくに落下のあとは、見た目に異常がなくてもゼロ点がずれていることがあります。
カタログに書かれた精度は出荷時の値なので、使い込んだ機種ほど自分で確かめる意味が大きくなります。
標準板を使った確認の手順と、メーカー校正に出す判断は膜厚計の校正が必要になる条件で解説しています。
よくある質問
塗る前と塗った後、どちらで測りますか
電磁式と渦電流式の膜厚計が測るのは、乾燥して固まったあとの膜厚です。
塗った直後のウェット膜厚を知りたい場合は、塗料に差し込んで読み取るくし形のゲージを使います。
両者は測っている対象が別なので、数値をそのまま比べられません。
ゼロ点合わせ用の板が手元にないときは
測る対象と同じ材質で、塗装されていない部分を探して代用します。
建具なら裏側、鋼構造物なら未塗装のボルト座面などが候補です。
材質や厚さが違う板で代用すると、その差がそのまま誤差になるため、できるだけ近い面を選んでください。
スマートフォンのアプリで代用できますか
できません。塗膜の厚さは磁界の変化や渦電流の変化を検出して求めるもので、専用のプローブがなければ測れない量です。
木部やコンクリートの塗膜は測れますか
電磁式でも渦電流式でも測れません。
素地が金属でないため、どちらの原理も成立しないからです。
塗装の対象ごとにどの方式を選ぶかは塗装の素地で変わる膜厚計の選び分けで解説しています。
中古で手に入れた機種はそのまま使えますか
使う前に標準板で確認してください。
前の持ち主の使用状況が分からないため、プローブの摩耗や内部の狂いがあっても外見では判断できません。
方式そのものの見当が付かない場合は、膜厚計の方式と選び方で解説している分類と型番表記を手がかりに確かめるのが先になります。
まとめ
膜厚計で数値を信じられるかどうかは、プローブを当てる前の段取りで決まります。
素地の材質を確かめて方式を合わせ、同じ素地の未塗装面でゼロ点を取り、面に垂直に当てて数か所を測る。
この流れを崩すと、エラーではなく「それらしい誤った数値」が出てしまい、塗り直しや錆の見落としにつながります。
曲面や板の端で値が動くこと、落下のあとはゼロ点がずれることも覚えておいてください。
ぜひ本記事の手順と失敗例を参考に、手持ちの機種で標準板の確認から始めてみてください。



